高すぎる理想は身を滅ぼす~セルフ・ディスクレパンシー理論と二つのコントロール戦略の観点から,伊勢谷友介の薬物逮捕を考えてみた~
昨日、個人的に衝撃のニュースを目にした。
るろうに剣心の映画に出演し、鬼気迫る演技をしていた伊勢谷友介さんが逮捕されたという。
自宅には20.3gの大麻を所持しており、回数に換算すると40回という。おそらく常習的に利用していたのだろう。
ここで疑問に思ったことがある。芸能人の大麻所持はなぜこうも起きるのか?
この疑問についてセルフ・ディスクレパンシー理論と二つのコントロール戦略の観点から、考察していく。
セルフ・ディスクレパンシー理論
Higgins(1987)によると,人が抱く感情的な悩みや苦しみは,理解される事故の側面相互の関係による問題であるとし,セルフ・ディスクレパンシー理論を提唱している.
彼は,三つの自己領域(現実自己,理想自己,義務自己)と二つの自己観点(自己,重要な他者)の組み合わせによって,それらの間のディスクレパンシーと感情の問題を結び付けたモデルを提案した.
そのモデルによると,人は現在の状態と自己指針の差異を縮小するように動機づけられており,その中でも現実自己と理想自己の差異は,理想や願望が達成されておらず,悲しみや,失望,不満足など失意落胆に関連する感情が生じるとされている.
さらに,斎藤(1959)によると,神経症群は健常者群に比べ理想自己と現実自己の間により大きなズレがあることがあきらかになった.また,神経症群は,健常者群に比べて現実自己が低く評価されており,逆に理想自己は極めて高く評定されていた.
これらの結果から,理想自己と現実自己のズレは神経症的傾向と関連があることは明らかである(上出・大坊, 2004).
つまり,高く理想を持ちすぎることは,将来に対する漠然とした不安を持ちやすくなることが言える.
~逃走-闘争戦略~
最近読んでいる,「幸福になりたいのなら,幸福になろうとしてはいけない~マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門~」著ラス・ハリスの中で,人は不安や不快な感情を抱いた時には,自分の感情をコントロールをしようとする二つの働きが生まれると述べられている.
逃走戦略
これは,望ましくない感情や思考を避け,遠ざけようとする戦略である.
具体的には,
・気を紛らす-不快な感情を避けるため,タバコを吸ったり,お酒を飲んだり,一晩中スマホを見てそれを考えないようにする
・意図的に意識朦朧状態になり,感覚をマヒさせることによって,不快な思考や感情を追い払う-薬や麻薬,アルコールを使用することなどが挙げられる.
闘争戦略
これは,望ましくない感情や思考をねじふせようとする戦略である.
具体的には,
・抑圧する-望ましくない思考や感情を心の深い部分に無理やり押し込める
・自分いじめをする-気持ちを変えるために自分をいじめる
・コントロールしようとする-考えや感情をコントロールしようとする.
この二つのコントロール戦略は適度に使う分にはいいのだが,過度に使いすぎると依存症や精神障害,愛着障害に繋がってしまう.
個人的見解
今回逮捕された伊勢谷友介は,この心理学的観点から,おそらく二つの特長を持っていたのではないかと考えられる.
それは,
・高すぎる理想自己
・過度に逃走戦略を用いて,なんとか自分であろうとした
一つ目の高すぎる理想自己に関しては,俳優業として日ごろから自他ともに求められる能力が高いことにより,仕事をすればするほど理想自己はまるで螺旋階段のように高くなっていったと推測される.
そのような現実と程遠い自分をもつことで、不安や不快な感情を追い払おうとほんの軽い気持ちで最初は大麻を吸った事だろう。
そのたった一回で得られた快楽は、一度味わうってしまうと正のフィードバックが生じ,不安や不快な感情が現れたときにはまたその快楽に手をだすというループに陥ってしまう.
これらのことから,まさに伊勢谷友介は味をしめ,大麻が常習化し抜け出すことのできないループに陥ったと考えることができる.
最後に
冒頭で芸能人に限ってのような書き方をしたが,このような依存症は芸能人限らず人間共通の問題であるため,ブログで取り上げてみた.
自分だけは違うと思ってはいけない。
知識としてこれらをしっているだけでも対処できることがあると思う.
いつ投稿できるかわからないが,「様々な依存症から立ち直るためには?」と「客観的に自分を見るには?」(仮タイトル)で記事にしていく.